2015年09月11日
平成26年(ワ)第343号損害賠償等請求事件(被告・武雄市、樋渡啓祐氏)#1
9月1日に裁判の傍聴に行ってきた。
その裁判は佐賀地方裁判所で争われている、「平成26年(ワ)第343号損害賠償等請求事件」で、原告は武雄市議の谷口攝久氏とその配偶者の方で、被告は武雄市と前武雄市長の樋渡啓祐氏である。
訴えは平成26年6月定例議会の一般質問において、各議員への質疑に対する答弁のなかで樋渡啓祐氏が、質問の内容とは全く関係なく、市議のなかに借金を返さない政治家としての資質にかける者がいる、と何度も発言したことに端を発する。
その核心は、「借金踏み倒し議員」などの言葉を使い、氏名は答弁中に発していないのだが、十数回にわたり繰り返されたことによって、答弁後に特定の議員に視線を送るなどの行為と相まって、個人の特定が安易に可能であり名誉毀損にあたるというものである。
なお、公判整理によって、「借金踏み倒し議員」などの表現が、一連の樋渡氏の議会答弁を通じて個人を特定出来てしまうのか否かが、唯一の争点となっている。
「特定できる根拠」の一つとして、原告側は平成26年6月12日、猪村利恵子議員の子ども議会関する一般質問に対する、樋渡啓祐氏の答弁を示している。
ただし私ね、重ねてで本当にしつこいんで申しわけないんですけれども、やっぱりね、これをこうすべきだっていう議員はもう必ずね、その前にちゃんとお金返すべきだと思うんですよ。いやこれ笑い事じゃないですよほんとに。あのね、べき論を私ども市民に言う人がね、無職の高齢者の方にね、高い報酬がありながら返さないって。やっぱり今議会から報酬を上げろ上げろって僕も言ってるんですよ。もう上げたくないですよ、もうそんな。またこれ勘違いとか誤解とかされますので、ほんとにね、許せん。だからそういう人たちが、そういう人がね、べき論を語るっていうのはちゃんちゃらおかしいと思います。そういう意味で今回大人のちょっと硬直化したね、その、議会から子ども会議というのは、重ねてでありますけど私どもとしても支援をしてまいりたいと、このように思っております。
という答弁である。
■平成26年6月12日、猪村利恵子議員の一般質問議事録(上記引用個所は、P298の3行目以下。)
■平成26年6月12日、猪村利恵子議員の一般質問動画(上記引用個所は、13分30秒あたりから。)
原告である谷口攝久議員も、二日前の一般質問で子ども議会について触れている(平成26年6月10日、谷口攝久議員の一般質問議事録(子供議会に関する言及は、P144の10行目)。
争点は引用文の冒頭の「ただし」という語彙の意味・用法である。子供議会についての質問で、唐突に「借金踏倒し議員」についての答弁をするのは、間接的に二日前に子供議会に関して言及した谷口攝久議員を指していると、容易に導けるということなのである。
広辞苑(新村出 (2008). 広辞苑第六版 岩波書店)によれば、「ただし」という言葉の意味を次のように記している。
(1)上の文を受けて、補足・条件・例外を付け加える時に、その初めに用いる語。
(2)上の文を受け、それに対する疑問・推量を付け加える場合に用いる語。
新明解国語辞典(山田忠雄ほか (2012). 新明解国語辞典七版 三省堂)はこうだ。
すぐ前の文で述べた事柄について、補足的な説明・条件・例外であることを示す、言い出しの言葉。
以上からも、「ただし」という言葉は、どう考えてもそれまでの文・言葉に続けて、同じ話題を続ける場合にしか用いないものである。
さはさりながら、平成27年9月1日の公判では、被告である樋渡啓祐氏は尋問で、「『ただし』というのは広辞苑によれば例外という意味。違う話題に触れるために文節を切る言葉」と陳述した。
また、事前に提出されていた当人の陳述書では、「『ただし』というのは、私自身の意識としては「ところで」という意味で用いた接続詞と理解していただきたい」としている。
全く違う話題へと展開させる場合に使うのが「ただし」という言葉だと言いたいのだろうが、「例外」を語るのであればそれに相対する「原則」が前文にあるはずであり、同氏の言うことはまるで道理に合っていない。
さらに驚いたのは、原告側弁護士から「市議会では市政事務に関することのみが、質問・答弁されると被告人は言っているが『ただし』以下の答弁は、猪村利恵子議員の質問の、どの部分に対する答弁か?」と問われ、「きょう私も初めての一般質問でどぎまぎして失敗したりして先輩の議員さんたちから叱咤激励をいただいたところではございますが、(平成26年6月12日、猪村利恵子議員の一般質問議事録(P297の5行目以下。)」の部分であると、トンデモな陳述もした。
樋渡啓祐氏は、今公判のなかで以下のような陳述もした。
謝金踏み倒し議員がいる事を議会で発言するのは、氏名を特定しなくても名誉毀損に当たるのではないかと危惧したが、政治家の資質を正すために発言を繰り返した。
にも拘わらず数分後には、全く反対のことを平然と陳述するのである。
議員、傍聴人、市民に訴えるために、借金踏み倒し議員についての発言を繰り返すのは、名誉毀損にあたるリスクはないと思っていた。
といった調子である。なお、それらの陳述は自身の代理人弁護士の質問に答えたもの…。どういう思考回路をされているのやら、大いに理解に苦しむ。
ということで、まだまだ「樋渡劇場」のネタは数多く残された公判だったのであるが、長文になりすぎるので次回エントリーでw
ほんでもって、今日も佐賀地裁へ行ってきた。
事件名は「平成27年(行ウ)第3号」で詳細はコチラ。福岡民放局1社、新聞社4社が終了後に原告の方に取材されておられました。「アンチひわたん」の波は、やっとウネリを見せてくれそうです。
※平成27年(行ウ)第3号の次回公判は、11月6日(金)の16時30分からです。多くのマスコミの取材を熱望!!
Posted by 今仁 at 17:35│Comments(0)
│武雄問題
※このブログではブログの持ち主が承認した後、コメントが反映される設定です。