2010年11月11日
天使の降り立つ橋はあるのか?
毎年、冬になると思い出す話を。
そいつとは会社の同僚だったんですが、その当時は配属場所が違い、めったに顔をあわせる機会が無かったんで、久しぶりに会ったんですよ、パチ屋で。
パチンコで二人とも勝ったこともあり、飲みに行くことにしました。
焼き鳥を食べた後、スナックに行こうと歩いていると突然、そいつは、飲み屋街の道端によくいる占いのおばさんに「占ってもらう」と言い出したのです。
占いを信じるようなタイプではまったくないし、どちらかというと私と同じような、「金をドブに捨てるようなもの」と、考えるようなやつだったんです。
いぶかしがり、さっさと行こうと言っても聞きません。 仕方なく数分の間、待つことにしました。
占いのおばさんは手相を見てたんですが、当たり障りの無い誰にでも当てはまりそうな話でお茶を濁しています。数千円を払い、そいつは満足そうな表情を浮かべていました。
それから数ヵ月後、残業をしてたら電話がかかってきました。
対面に座っている女性がその電話を取ったんですが、その女性の表情が一瞬にして曇ったんで「すわっ、何事か」と電話の応対に聞き耳を立てました。
その電話は、「あいつが飛び降り自殺をした、ビルの6階から」という内容のものでした。
この間、一緒に楽しく飲んだあいつが飛び降り自殺をし即死したのです。
その後の家族の話でも、自殺の原因となるようなことは何も心当たりが無い、という話でした。 何が彼を自殺に追い込んだのか、結局、全ては藪の中で何一つ分かりませんでした。
それから一年後、会社の忘年会の会場に向かうためタクシーに乗ってる時に、ふと、あいつのことを思い出しました。というのも、あの時二人で歩いた同じ通りをタクシーは走っていたからです。
あれからもう一年か、と思っていると忘年会シーズンという事もあってタクシーの空車が多く、飲み屋街だから前が詰まってしまい、乗ってるタクシーが進みません。
何気に外の風景を見ると、ちょうど真横に占いのおばさんが営業してました。
「あれっ、あいつが占ってもらったおばさんだ」
なぜか、顔を良く覚えていました。
次の瞬間、一つのフレーズがフラッシュ・バックしながら記憶に蘇ってきました。あいつが一年前に、このおばさんに言われたフレーズが。
「来年はいい年ですよ。でも、新聞に載るようなこととか、警察沙汰とかには気をつけてくださいね」
血の気が引くような感覚でした。
占いが図らずも当たってしまったということも、そうなんですが、渋々待っていて、先を急ごうとしていた私が、なんでそのフレーズだけを鮮明に覚えているのか? このおばさんの顔を何故こんなに明確に覚えているのか?
あいつが自殺したということを聞いたときにさえも、思い出ださなかったことを、何故今、思い出すのか?
その日は、いくら酒を飲んでも酔えませんでした。
占いなんて、所詮インチキだといくら自分に言い聞かせても・・・。
Posted by 今仁 at 23:42│Comments(0)
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