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2019年02月10日

空のドリフターズ



空のドリフターズ




 0
 
 僕は二十数年前に復元された天守閣を持つ城を左手に見上げながら、その隣接地のコインパーキングに停めている自分の車に向かって歩いていた。
 仕事が終わったことが僕を憂鬱にさせている。家に帰りたくないのだ。妻と二人の娘がいる家に。コインパーキングの入り口が迫ってくるにつれ、歩幅が無意識に狭くなっていく。その事実に気付き急に歩幅を戻した。そして、その入り口を通り越した。
「まぁ、しかたない。一人で飲みにでもいくか」
 僕は強めにつぶやいて、それを聴覚に再認識させ自分を正当化させようと試みた。

 女性がソファーに座った。その拍子に彼女が床に置いたティファニーのトート・バッグから、モーター音が聞こえてきた。
「ごめんなさい。ローターのスイッチがバカになっていて。ちょっと振動を与えると勝手に動きだすんです」
彼女はそのバッグ、エルメス・バーキンの中のローターを取り出し、スイッチのオン・オフを何度か繰り返し、ローターが止まったのを確認してバッグの中に戻した。
「はじめまして。ミクです。ご指名ありがとうございます」
 飲み屋街の大きな通りから一本奥に入った小路にある、レストルームと称するホテルに僕は入った。カップル向けでないし、一人客向けでもない。ホテルのファスト・フード版のような造作で、明らか特定の客向けだ。ベッドの上に横たわり、ピンとしすぎたシーツに違和感を感じながらスマホでデルヘル店を検索した。適当に店を選び、サイトに並べられていた顔にボカシが入ったいくつかの写真の中から適当に彼女を指名した。
「コースはどうしますか」
 彼女はそう言うと、60分で1万6千円からのコース別の料金を、九九を覚えたての小学二年生が、それを自慢げに諳んじるように説明した。
「このあと飲み会だから60分で」
 僕は財布の中から現金を取り出して彼女に渡した。
「いいですね、スッキリしてお酒ですか。じぁ今が0次会ですね、楽しみましょう」
 彼女はそう言いながらユニットバスの方へ歩き出して、一緒にシャワーを浴びようと促した。二人で脱いだ服をベッドの上に置き、ユニットバスに入った。
「あら、もう元気ですね」
 彼女は微笑みながら、僕の勃起した男性器に優しくシャワーノズルから出る温水をかけた。
「嫁とはセックスレスだから溜まっているんだよ」
 僕の妙な言い訳が一音も聞こえなかったかのように、彼女は硬くなったそこを細い指でゆっくりと愛撫した。
 シャワーのあと、すぐにベットに向かわずソファーに二人で座った。煙草を吸いたかったからだ。
「私も煙草吸っていいですか」
 彼女が聞いてよこすので、もちろん、と頷いた。彼女の煙草はアメリカンスビリッツのメンソールライトだった。その香りにそそられて彼女の付けていたバスタオルを剥ぎ取った。彼女の腹部には、割とはっきりとした妊娠線があった。それを見て、僕の男性器は再度、激しく勃起した。


 1   

 焼き鳥屋「ほむら」では、店内の空気が、はんなりとした気を放ってくる、古びたカウンター席の右端に座ることが多い。お気に入りの席だ。
すぐ隣にはビールサーバーが鎮座している。その奥は焼き場で、炭の熱気を微妙に右頬に感じることがある。それが確かなことなのか、あるいは酔いの微熱を僕がそう錯覚しているのかは、いまだに判然としない。年季の入ったカウンターから見える店内の風景は、このお店を初めて訪れた数十年前と驚くほど変わらない。昭和の息吹が、古い酒蔵の蔵付酵母のように空気中を漂っている様も同じだ。
このお店に初めて連れてきてくれた、僕が常連だったスナックのママは亡くなった。この店を昭和の終わりに立ち上げた、先代の大将も亡くなった。大きく安らかに、彼女たは僕の記憶の中で生き続けている。それは若冲の描く病葉のように、朽ちかけながらも強烈な生命のリアリティを放つことを止めない。
「久しぶりだね」
 僕の左側に座った老人が話しかけてきた。よく会う常連客だ。二日連続で遭遇しても、第一声は変わらず『久しぶりだね』である。
 彼は肝機能が十分に機能していないので、酔うのが極端に早い。自身で言うには、膵がんが転移し、体中にメスを入れられまくったらしい。そのせいで、胃は正常な人とは左右逆に腹腔内に納められているらしい。
 「肝臓は、私鉄バスの運転手を定年した後に、たまたま始めたラーメン屋が儲かって、飲み歩いたもんだから悪くしたんだよ。それに今は胃が逆で吸収が早いだろ。芋焼酎のロックを一杯飲んだだけで、酔っぱらっちまうよ」
 それが医学的に正しいことなのかどうかはわからないが、彼は飲み始めるといつも、その常套句を口にする。


 2   
 
 スナックというのかラウンジというのか。とりあえず若い女の子がいてカラオケも歌える『オルリー』という店である。オーナーであるママは妻の友人である。
 地元のCATV局が流している番組が原因でママとの浮気がばれたことがある、夜明けまで二人で飲みつぶれ、ママのマンションに行った。缶チューハイを飲んでいると妙な心持になった。隣町の公園までゆったりとした歩様で行う、ジョギングのようなセックスをした。夕方前に起きだして、ベランダに出て煙草を食った。その瞬間、地元のCATV局の車がマンションの前の道路を通過した。番組放送用のカメラを稼働させながら・・・。
 後日、地元の道路を走る車のフロントガラス動画に、一昔前のダンスミュージックを被せた番組が放送された。二週間ほどリピート放送されたらしい。妻は偶然その番組を見たのだ。友人の住む見慣れたマンションの見慣れた部屋のベランダで、夫が煙草を吸っているテレビ画像を見た時の気持ちはどんなものだろうか。僕には想像しがたい事象なのだが、そのこと以上に想像しがたいことがあった。
 「私の友達と浮気してるでしょう?」
 その番組が放送されてから一年後に、妻は僕に向かって言った。ありふれた口げんかがくすぶった末に・・・。

「なんか歌ってよ」
ママが僕のマッカランの入ったロックグラスに、氷を足しながら言った。
「ああ、なんでもいいよ」
「じゃ、『さっちゃんのセクシーカレー』と『メギツネ』を」
 

 3   
 
 「角打屋」という店のカウンター席の奥の壁には、焼酎のボトルが数多く並んでいる。この店のママはレズビアンで、今年、還暦を迎えた。焼酎のボトルの棚の上には、古いレコードジャケットが二枚貼られている。いしだあゆみの『ブルーライトヨコハマ』と、ちあきなおみの『夜間飛行』だ。
 僕が座った席の右奥の壁には、ジバンシィのドレスを着たオードリー・ヘップバーンの写真が貼られている。彼女の右手には、そのドレスのフォルムとは不似合いなクロワッサンが持たれている。
 隣の席には常連のカップルが楽し気な会話をしていた。彼らはというか彼女らは、トランスジェンダーのレズビアンとストレートのレズビアンのカップルだ。おまけに彼女らは、それぞれ創価学会とエホバの証人を先祖代々信仰している家系に生まれ、自分自身も信者となっている。
 なんとも複雑なカップルである。僕には、性の嗜好や宗教の選択には、先入観や嫌悪感はない。ただただ、彼女らの立場は社会的に「めんどうくさい」だろうなと思ってしまうのだ。僕が一人でいることが好きで、飲み歩く時も一人。家庭内でも実質は一人のようなものなのは、他人と関わると「めんどうくさい」と、すぐ思ってしまうからだ。そんな僕からしたら彼女らの関係は、量子コンピューターの稼働ロジックのように難解だ。
 

 4  

 レズビアンのママの店のある狭い通りから、タクシーの拾える大きな通りへ向かい歩いた。このあたりは、再開発事業にかからなかったので昔からの飲食店が数多く残っていたが、いつしか飲み屋街の中心がその事業の区画内に移動し、最近では閉める店も多くなっている。事実、僕もこのあたりを歩くのは数年ぶりだ。
ふと、開店から間もないような外装の店が目に付いた。「BAR・エイリアンズ」という看板を掲げている。なにか惹かれるものを感じ、そのドアを開けた。甘すぎる日本酒の熱燗ばかり飲んだので、ロングドリンクの美味しいのを飲みたいという気分もあった。
中に入ると、店内は10席ほどのカウンターだけのこじんまりしたつくりだった。カウンターの中には若い女性が一人きり。他に客はいない。スピーカーからは、よくありがちなジャズではなく、ザ・バンドのラスト・ワルツが流れていた。席に座るとその女性のバーテンダーが「お久しぶりです」と言葉をかけてきた。一瞬、顔見知りかと思いもしたが、いちげんの客にもそう挨拶する店があると聞いたことがあるので、多分その類なのだろう。
そのバーテンダーは「何になさいますか」と言いながら、メニュー表を渡した。座った席の正面に、オールド・トム・ジンが置かれていたので、メニューを見ずにトム・コリンズをオーダーした。女性バーテンダーは「かしこまりました」と確信のこもった声で応え作り出した。
目の前に置かれた、トム・コリンズを一口飲み、ふと視線を上げると正面にバーテンダーが立っていて、見つめあう形になった。
そして、僕はフリーズした。
 目の前にいるバーテンダーは、高校生の時に一緒のクラスにいた女の子だった。化粧をしていても、日本人とは思えないようなスラブ系がかった顔は隠せない。その女の子は転校生で、親類の叔母の家に同居しているという話だった。しかし、三年生の夏休みにその叔母は他殺体で発見され、それ以後女の子は行方不明になったのだった。いや、とその考えを否定する。
あの事件はもう四半世紀も前の話だ。目の前の女性はどう見ても二十歳そこそこにしか見えない。僕の半分の年齢だ。他人の空似以外に考えようがない。
「どうかいたしましたか」と聞いてくるので、「いえいえ、あまりにカクテルが美味しかったのでびっくりして」と答え、平静を取り戻す。いや実際、カクテルは飛び切りの味だった。
それから、ジン・リッキー、ホワイト・レディー、バラライカ、XYZと飲み続けた。そうするうちに緊張が解けて、高校の同級生に瓜ふたつだということ、あの事件のこと、その女の子が学校で際立った存在で人気が高く、僕も密かに思いを寄せていたことなどを話すと、バーテンダーは心地よい相槌を打ちつつ、微笑みながら聞いてくれていた。
「もしかしたら君はその同級生で、魔女やドラキュラの類で年をとらないというオチだったりして」
酔いに任せ軽口を叩くと、その女性バーテンダーは急に神妙な顔つきになり言った。
「そうかもしれませんよ。老化はDNAの末端のテロメアが細胞分裂のたびに短くなり、ついには新たな分裂が止まり細胞が死滅するからと言われています。もし、テロメアが短くならない突然変異を手に入れれば、不老不死とまでは行かなくても、通常の人類の数倍の寿命を手に入れられる可能性があります」
「でも、それでは活性酸素により傷ついた人体に有害なDNAまで残してしまうことになる。多くの癌細胞は、テロメアを効率よく複製するテロメアーゼという酵素の働きで、人体に有害な増殖を続けると言われているし・・・」
「よくご存知ですね。しかし、メッセンジャーRNAの真の働きなど何一つとして完全には、人類はゲノムを解析してはいないんです。本当のセントラル・ドグマは永遠に見つけられないと思います。そういった意味では、老化と無縁な、あるいは老化が著しく遅い人類の中のグループがいても不思議ではありません」
自分の中で一度否定した「同級生?」という考えを反芻していると、
「すみません、冗談が過ぎましたね」と、女性バーテンダーは笑顔を見せた。
「本気にされました?」
「いやいや、一瞬は」
それからは、好きな音楽の話とかカクテルの話とかで終始し、心地よい時間が過ぎていった。




(It may possibly go on.)


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Posted by 今仁 at 19:32│Comments(0)テキスト
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