2015年07月24日
砂川事件まとめ

今日、参議院の「我が国及び国際社会の平和安全法制に関する特別委員会」が、今国会で初めて開催され議長が選出された。
少数政党まで委員が選出される、委員数45人という規模で来週から議論が繰り広げられる模様である。
安保法制の国民への周知を狙ってニコニコ動画に出てみたものの、散々な視聴数だったので慌てて民放にゴリ押しで出て、妙な「例え」でかえって逆効果となってしまった安倍晋三首相と、先月、6月4日に開催された衆議院の憲法審査会で、「今回の安保法制のうち、少なくとも集団的自衛権の部分は違憲である」と述べた、与党推薦の参考人である長谷部泰男早大教授のインタビュー記事が、8月号の別々の月刊誌に掲載されていた。
双方の「砂川事件」に関する部分を引用してみる。
WiLL 2015.8月号
「平和安全法制」私が丁寧にわかり易くご説明します
安倍晋三 第九十七代内閣総理大臣
平和安全法制に関しては「違憲ではないか」という批判も多くみられます。そうした批判は当たらないということを、きちんとご説明したいと思います。
今回の法整備にあたって、憲法解釈の基本的な論理は全く変わっていません。この基本的論理は、砂川事件に関する最高裁判決の考え方と軌を一にするものです。
憲法判断の最高の権威は最高裁判所です。その最高裁が自衛権について述べた唯一の判例が、昭和三十四年の(一九五九年)の砂川判決です。憲法の番人である最高裁が下した判決こそ、我々がよって立つべき法理であって、当然この法理に基づいて解釈する。いわばこの法理を超えた解釈はできない、ということになります。
砂川判決は憲法前文の平和的生存権を引いたうえで、次のように明確に述べています。「わが国が、自国の平和と安全を維持しその存立を全うするために必要な自衛のための措置をとりうることは、国家固有の権能の行使として当然のことと言わなければならない」
判決に記された「必要な自衛のための措置」については、個別的自衛権、集団的自衛権の区別をしておりません。この点は非常に重要です。
そして、砂川事件は次のようにはっきりと述べています。「わが国の存在の基礎に極めて重大な関係を持つ高度の政治性を有する者については、一見極めて明白に違憲無効でない限り、内閣及び国会の判断に従う」すなわち、国の存立にかかわる安全保障政策については、どのような方針のもと、どのような政策をとり、それをどのように具体化していくかは、第一次的には内閣と国会の責任で取り進めていくものなのです。
世界 2015.8月号
長谷部泰男教授に聞く
安保法制は なぜ違憲なのか-「切れ目」も「限界」もない武力行使
要するに、砂川判決の文面上は「個別的自衛権」「集団的自衛権」が区別されていない、ということだと思いますが、あの判決で問題になっているのは、日米安全保障条約の合憲性、より厳密には安保条約に基づく米軍の日本への駐留が合憲か違憲かという話です。安保条約は、日本の個別的自衛権とアメリカの集団的自衛権の組み合わせで、日本の安全を保障しようというものです。
砂川事件最高裁判決から、「わが国が、自国の平和と安全を維持しその存立を全うするために必要な自衛のための措置をとりうることは、国家固有の権能の行使として当然のことと言わなければならない」という部分を抜き出していますが、この部分をふくむ段落の結論は、「憲法九条は、わが国がその平和と安全を維持するために他国に安全保障を求めることを、何ら禁ずるものではない」。九条は日本がアメリカに安全保障を求めることを禁じていないと言っているだけです。この結論を支えるために「自衛の措置は国家固有の権能の行使」と述べているだけで、日本の集団的自衛権とは関係がありません。
(中略)
(憲法の番人は最高裁であって憲法学者ではない、という意見もあるということに対して)もしかすると、砂川判決でも一種の統治行為論を使って直接的な判断は避けられた、最高裁も判断を避けるぐらいなのだから、憲法学者も黙っていろ、そういうおつもりなのかもしれません。
統治行為論というのは、決められた手続きのもと、限られた証拠に基づいて当事者間の具体的な紛争を解決する司法裁判所の役割に照らしたとき、高度に政治的な問題について判断するのは差し控えようという議論です。
しかし、そういう判断差し控えをすべきかどうかとは別に、違憲か違憲かではないかは実態問題としてあります。それについては政府は正しく答える義務がある。裁判所に下駄を預けたから、違憲だという批判に答えなくて済むことにはならない。
これらを読んだだけでも、政府が「砂川事件」を引いてくるのは、筋が悪いとはっきりする。
03 - 内灘闘争 & 砂川闘争 - 1953 & 1956
サンデープロジェクト 08年08月24日 砂川事件〈シリーズ言論は大丈夫か〉
SS22 奥平康弘×木村草太×春名幹男「砂川事件判決とは?」2014.04.16
■なぜ、今、「砂川判決」なのか──本当の問題点と珠玉の部分 【江川紹子の事件簿】2015年06月13日
■【安保法制】砂川最高裁判決と72年政府見解で揺れる安倍政権の矛盾 渡辺輝人・ 弁護士(京都弁護士会所属)2015年6月10日
■砂川事件判決文 裁判所・裁判例情報
■ウィキペディア・砂川事件
20150610 衆議院・我が国及び国際社会の平和安全法制に関する特別委員会での、日本共産党の宮本徹議員の質疑。25分すぎぐらいから、横畠法制局長官に対する砂川事件に関する質問が行われている。しんぶん赤旗は、「横畠(よこばたけ)裕介内閣法制局長官は「(判決は)集団的自衛権について触れていない」と認めました。安倍晋三首相や自民党は、砂川判決が集団的自衛権行使容認の根拠であるかのように言いはやしていますが、これが破たんに追い込まれる重要答弁です。」と伝えている。
Posted by 今仁 at 18:23│Comments(0)
│安保法制
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