2009年01月05日
心のミシュラン・・・とろけるよなファンキー・ラーメン 第6回
北九州在住のブースカさんと佐賀在住の私がコラボって「心のミシュラン」というタイトルのもと、自分史の中のエポックメイキングなラーメンたちへの想いを綴っていきます。
「佐賀ラーメンの代表と言えば一休軒だ」というのには、多くの佐賀人が同意できることだろう。
昭和三十年代前半に、久留米ラーメンを源流とすると思われる一休軒本店は創業した。現在の一休軒系の店を系統別に整理してみると、以下のようになる。
■源流系
開店当初の一休軒本店の味に近い店。
・成竜軒(本店及び大財店)
・駅前ラーメン・ビッグワン(※1)
・葉隠(※2)
■現本店系
現在の本店及びその味に近い店。
・一休軒本店(※3)
・一休軒さがラーメン
・一休軒本庄袋店
■鍋一系
一休軒鍋島店とその弟子のお店。
・一休軒鍋島店
・いちばん星(※4)
・いちげん
■独自発展系
現本店の味とはまったく違う、独自の発展を遂げた特異なお店。
・幸陽閣(旧幸陽軒)
一休軒鍋島店で三年間修行した「いちげん」店主が、自分の店を開店させたのは、1998年のことである。
開店から数年は、佐賀市川副町という飲食店としては悪条件である立地も重なってか、閑古鳥が鳴いていたという。
その後、師匠の教えのコアな部分は踏襲しつつ独自の工夫を重ね作り出した出汁の魅力は、そのラーメンを徐々に客を呼べるものへと進化させていった。
開店から満十年を経過し、その軽やかなのに奥深く濃厚なスープの風味は、こってりのレベルが脂の多寡で語られることの多いオサレなズージャ・バンダナ系ラーメンが、ものすごく陳腐なものに思えるほどに魅力的である。
そんな「いちげん」に、私は激しく通い倒している。様々な表現を駆使しても、ブログにアップするのに困るくらいの回数である。
いちげんのスープは、日々のブレや時間によるブレは大きいと感じる。
豚骨ラーメンは特にブレが大きいラーメンだと思う。ちょいとした客入りの変化で出汁が変わっていくのである。そういう意味ではリピーターとしてしか、より深くは楽しめないラーメンだと言えるのかもしれない。
元ダレ主導のケバいラーメンだったり、過剰な味の足算がされたラーメンでは、味の均一化は図れるだろうが、面白味はない。
あたかも四季の移り変わりを慈しむように、微妙な日々の変化を楽しめるのは、滋味哀愁な佐賀ラーメン全体に共通する特性なのだ。
遠方から駆けつけて、たまたまハズレを引いてしまうのも一期一会というものだろう。
漫画家でイラストレーターの江口寿史は、自身の好きなラーメン店である「たんたん亭(東京都杉並区)」を評して、「この店のカウンターに座ってラーメンを待つことは僕の小さな幸せのひとつだ。いつも開店する頃に行く。」「日によってブレもある。かなりある。でも平均値のとこでブレのまったくない店のどこがいいの?イマイチの時もまあまあの時もあるから、とびっきり旨い時の喜びが際立つじゃん。」と語っている。(※5)
豚骨ラーメンは、どんな名店であろうが、日々その表情を変える。同じ味を毎日提供出来てこそ一流の料理人なのであろうが、こと豚骨ラーメンについては、例外のように思う。
作り手にも食べ手にも絶対に予知できない、辿り着くまで見ることの許されないサンクチュアリが豚骨ラーメンにはあるのだ。
その違いを楽しむのはリピーターの特権であるのだ。あるリピート店の味が、決定的に許せないラインに堕ちたら、二度と行かないだけである。至極シンプル(ある意味残酷)。
「いちげん」は、ここ最近の一ヶ月は店主の入院加療のために休業していた。
明日、1月6日から、やっと再開するという。
冬季限定の佐賀海苔の一番摘みのものを使った「海苔ラーメン」を提供開始することなく休業に入っていたのだが、やっとあの味に邂逅できる時が来たことを純粋に嬉しく思い、ワクワク感が止まらない私である。
※1 本店で修行された成竜軒の店主が一時働いておられたが、現在は一休軒にゆかりのある方はいない。 しかし、ラーメンの味は現在も、一休軒の源流に近いと思われる。
※2 横浜市のお店。食べた事がないので正直自信がないが、一休軒本店で修行された方から手ほどきを受けたらしいので、多分、源流系ではないかと思う。
※3 現在は閉店してしまって営業していないが、京都市と長崎市に本店の暖簾分け店(屋号は二店とも「一休軒」)が存在していた。
※4 げんこつのみを使うのが鍋一の原則であるが、現在のいちばん星は他部位の豚骨も使っている。
※5 江口寿史・徳丸真人『ラーメン道場やぶり』集英社、2008年、228頁。
過去ログ
■第1回(一休軒本店)
■第2回(再来軒)
■第3回(成竜軒)
■第4回(まこと)
■第5回(幸陽軒)
■心のミシュラン外伝1(佐賀ラーメン慕情)
ブースカさんの過去ログ
■第1回(万龍)
■第2回(八媛)
■第3回(南京ラーメン黒木:前編)
■第4回(久留米への想い)
■第5回(黒崎の夜)
■心のミシュラン外伝1(佐賀ラーメン慕情)
■第6回(黒木と黒門と卵入りラーメン)
♪その頃もぼくらを支えてたのは
やはり このラーメンだった♪
「佐賀ラーメンの代表と言えば一休軒だ」というのには、多くの佐賀人が同意できることだろう。
昭和三十年代前半に、久留米ラーメンを源流とすると思われる一休軒本店は創業した。現在の一休軒系の店を系統別に整理してみると、以下のようになる。
■源流系
開店当初の一休軒本店の味に近い店。
・成竜軒(本店及び大財店)
・駅前ラーメン・ビッグワン(※1)
・葉隠(※2)
■現本店系
現在の本店及びその味に近い店。
・一休軒本店(※3)
・一休軒さがラーメン
・一休軒本庄袋店
■鍋一系
一休軒鍋島店とその弟子のお店。
・一休軒鍋島店
・いちばん星(※4)
・いちげん
■独自発展系
現本店の味とはまったく違う、独自の発展を遂げた特異なお店。
・幸陽閣(旧幸陽軒)
一休軒鍋島店で三年間修行した「いちげん」店主が、自分の店を開店させたのは、1998年のことである。
開店から数年は、佐賀市川副町という飲食店としては悪条件である立地も重なってか、閑古鳥が鳴いていたという。
その後、師匠の教えのコアな部分は踏襲しつつ独自の工夫を重ね作り出した出汁の魅力は、そのラーメンを徐々に客を呼べるものへと進化させていった。
開店から満十年を経過し、その軽やかなのに奥深く濃厚なスープの風味は、こってりのレベルが脂の多寡で語られることの多いオサレなズージャ・バンダナ系ラーメンが、ものすごく陳腐なものに思えるほどに魅力的である。
そんな「いちげん」に、私は激しく通い倒している。様々な表現を駆使しても、ブログにアップするのに困るくらいの回数である。
いちげんのスープは、日々のブレや時間によるブレは大きいと感じる。
豚骨ラーメンは特にブレが大きいラーメンだと思う。ちょいとした客入りの変化で出汁が変わっていくのである。そういう意味ではリピーターとしてしか、より深くは楽しめないラーメンだと言えるのかもしれない。
元ダレ主導のケバいラーメンだったり、過剰な味の足算がされたラーメンでは、味の均一化は図れるだろうが、面白味はない。
あたかも四季の移り変わりを慈しむように、微妙な日々の変化を楽しめるのは、滋味哀愁な佐賀ラーメン全体に共通する特性なのだ。
遠方から駆けつけて、たまたまハズレを引いてしまうのも一期一会というものだろう。
漫画家でイラストレーターの江口寿史は、自身の好きなラーメン店である「たんたん亭(東京都杉並区)」を評して、「この店のカウンターに座ってラーメンを待つことは僕の小さな幸せのひとつだ。いつも開店する頃に行く。」「日によってブレもある。かなりある。でも平均値のとこでブレのまったくない店のどこがいいの?イマイチの時もまあまあの時もあるから、とびっきり旨い時の喜びが際立つじゃん。」と語っている。(※5)
豚骨ラーメンは、どんな名店であろうが、日々その表情を変える。同じ味を毎日提供出来てこそ一流の料理人なのであろうが、こと豚骨ラーメンについては、例外のように思う。
作り手にも食べ手にも絶対に予知できない、辿り着くまで見ることの許されないサンクチュアリが豚骨ラーメンにはあるのだ。
その違いを楽しむのはリピーターの特権であるのだ。あるリピート店の味が、決定的に許せないラインに堕ちたら、二度と行かないだけである。至極シンプル(ある意味残酷)。
「いちげん」は、ここ最近の一ヶ月は店主の入院加療のために休業していた。
明日、1月6日から、やっと再開するという。
冬季限定の佐賀海苔の一番摘みのものを使った「海苔ラーメン」を提供開始することなく休業に入っていたのだが、やっとあの味に邂逅できる時が来たことを純粋に嬉しく思い、ワクワク感が止まらない私である。
※1 本店で修行された成竜軒の店主が一時働いておられたが、現在は一休軒にゆかりのある方はいない。 しかし、ラーメンの味は現在も、一休軒の源流に近いと思われる。
※2 横浜市のお店。食べた事がないので正直自信がないが、一休軒本店で修行された方から手ほどきを受けたらしいので、多分、源流系ではないかと思う。
※3 現在は閉店してしまって営業していないが、京都市と長崎市に本店の暖簾分け店(屋号は二店とも「一休軒」)が存在していた。
※4 げんこつのみを使うのが鍋一の原則であるが、現在のいちばん星は他部位の豚骨も使っている。
※5 江口寿史・徳丸真人『ラーメン道場やぶり』集英社、2008年、228頁。
過去ログ
■第1回(一休軒本店)
■第2回(再来軒)
■第3回(成竜軒)
■第4回(まこと)
■第5回(幸陽軒)
■心のミシュラン外伝1(佐賀ラーメン慕情)
ブースカさんの過去ログ
■第1回(万龍)
■第2回(八媛)
■第3回(南京ラーメン黒木:前編)
■第4回(久留米への想い)
■第5回(黒崎の夜)
■心のミシュラン外伝1(佐賀ラーメン慕情)
■第6回(黒木と黒門と卵入りラーメン)
【リプライズ】心のミシュラン・・・とろけるよなファンキー・ラーメン 第7回
【リプライズ】心のミシュラン・・・とろけるよなファンキー・ラーメン 第4回(まこと)
【リプライズ】心のミシュラン・・・とろけるよなファンキー・ラーメン 第5回(幸陽軒)
【リプライズ】佐賀・心のミシュラン(ロングインタビュー#1 池田屋)
心のミシュランまとめ
佐賀・心のミシュラン(ロングインタビュー#1 池田屋)
心のミシュラン・・・とろけるよなファンキー・ラーメン 第8回
心のミシュラン・・・とろけるよなファンキー・ラーメン 第7回
心のミシュラン外伝1「佐賀ラーメン慕情」
心のミシュラン・・・とろけるよなファンキー・ラーメン 第5回
【リプライズ】心のミシュラン・・・とろけるよなファンキー・ラーメン 第4回(まこと)
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心のミシュラン・・・とろけるよなファンキー・ラーメン 第8回
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心のミシュラン・・・とろけるよなファンキー・ラーメン 第5回
Posted by 今仁 at 22:01│Comments(1)
│心のミシュラン
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ある夜酔っ払って電話した。
相手は黒門の大将クモさんです。
他愛の無いバカ話をして新年会の話などしていて
僕 「クモさん!黒木で玉子入れて食べた事ありますか?」
クモさん...
相手は黒門の大将クモさんです。
他愛の無いバカ話をして新年会の話などしていて
僕 「クモさん!黒木で玉子入れて食べた事ありますか?」
クモさん...
心のミシュラン・・・酔っ払いおやじの戯言 第6回【ブースカの本日の麺です。】at 2009年01月06日 06:50
この記事へのコメント
以前葉隠の大将に直接伺いましたが 少し事実は異なると思われます
Posted by サト at 2018年09月30日 06:02
※このブログではブログの持ち主が承認した後、コメントが反映される設定です。